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「言語の獲得 ~まずリズム、つぎに音素~」

ウェルニッケ失語症患者は音素(母音や子音)を弁別して聴き取れないため、意味不明なことば(錯語)をしゃべります。ウェルニッケ失語症のための訓練である全体構造法(*1 JIST法)では、まず音声の300Hz以下の成分だけを聴かせる低周波刺激訓練で、日本語の話しことばが持つリズム・イントネーションを掴ませます。

その後、音声の3000Hz以上と300Hz以下の成分を聴かせる不連続刺激訓練を行います。3000Hz以上の成分を後から聞かせることで、子音等の音素が際立って聴こえるため音素弁別が回復してきます。全体構造法は、現在唯一の効果的なウェルニッケ失語症訓練方法だと思われます。

生まれたばかりの原始的喃語時期(生後1~4ヶ月)の赤ちゃんはまだ調音器官や聴覚が成人程に発達していません。まず原始的喃語をしゃべりながら日本語の話しことばが持つリズム・イントネーションを掴みます。標準的喃語時期(生後5~10ヶ月)に調音器官や聴覚が成長するに従って日本語の音素が掴みとれ、はっきりした話し言葉がしゃべれるようになってきます。

効果的な外国語ヒアリング・発音訓練方法として、クロアチアのザグレブ大学ペタル・グベリナは、言語教育にヴェルボトナル法を提唱し、スヴァグ「Suvag-lingua」(*2 周波数調整機)を使用して外国語の聴き取りや発音教育ができるという多くの論文を出しています。

低い周波数は大変刺激的で、音声の低周波帯域を通してリズム・イントネーションがたやすく聴き取れます。つぎに同じ音声の高周波帯域を通すと、脳は鋭い周波数によって刺激されます。この2つの鈍い刺激と鋭い刺激は、新しい言語のリズム・イントネーションと音素を際立たせながら、調音諸器官に新しい音韻体系の発音を準備させるのです。

さらに発音が聴覚を助けて外国語の音声をよく知覚できるようになると言われています。赤ちゃんの言語獲得と類似の過程を踏まえた、低周波刺激・不連続刺激を用いたウェルニッケ失語症訓練方法(JIST法)は、外国語ヒアリング・発音訓練方法にも効果的と思われます。

当社の失語症リハビリシステム「花鼓Ⅲ」では、全体構造法の低周波刺激・不連続刺激訓練が可能となっており、音声の周波数特性を制御する周波数調整器とマイク付きヘッドセットを使用します。

*1 http://www.jist.org/gakkai1.html
*2 http://www.suvag.hr/hrv/page.php

(河)

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