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2012年8月

地球外惑星の音

8月6日、NASAの火星探査機「キュリオシティ」が火星に降り立ったとの発表がありました。
既にいくつかの写真が送られてきており、新しい火星の顔を楽しむことができます。
砂漠のような風景ばかりですが、なぜかわくわくします。

キュリオシティに限らず、火星や月など地球外の風景の写真をニュース等で見たことある方がほとんどだと思います。
では風景ではなく音はどうでしょう?
地球外惑星の音を聴いたことがあるという方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。

少し前のニュースになりますが、英国 Southampton 大学の Tim Leighton 教授率いるチームが、火星やタイタン(土星の衛星)等で聴こえる音を作成したとのことです。
その星の大気の組成や大気圧、温度等から、「もしその大気中で人がしゃべったら?」「滝の音は?」「砂嵐は?」という音をシミュレーションすることができるそうです。

例えば金星では密度の濃い"ガス・スープ"のような大気のために声が低くなりますが、一方で音の伝わる速度が速くなり、しゃべっている人のサイズが小さいかのような錯覚を覚えるんだとか。
理屈はよく分かりませんが面白いですね。

これからキュリオシティから写真がどんどん送られてきて、火星の風景を目にする機会も増えるかと思います。
その景色とともに砂嵐の音やその中の人の声も想像してみると、より一層宇宙を楽しめるのではないでしょうか。

The sounds of Mars and Venus are revealed for the first time (Southampton 大学のページ)

Audio Gallery: What Other Planets Might Sound Like ※こちらで音を聴けます

(囿)

オリンピックとパラリンピック

大きな鐘の音とともにロンドンオリンピックが開幕しました。今この文章も中継を見ながら書いています。

テレビで中継を見ている私たちは余り気にしていませんが、選手にとって音は非常に大切なのではないでしょうか。スタートの合図や試合終了の合図は勿論ですが、歓声やブーイングも競技を左右するはずです。陸上の100m走などは0.01秒を争う競技ですから、スタート音の音源との距離により不公平が生じないよう各レーン毎に音源が設置されているようです。

オリンピックに比べると放送される機会は、ぐっと下がってしまいますが、パラリンピックではさらに音が重要になります。視覚障碍者の5人制サッカーやゴールボールでは、ボールに音源が入っていますし、陸上競技では「コーラー」と呼ばれる人が声や音で選手を誘導します。
日本障害者スポーツ協会の各競技紹介ページ

今大会は今までのところ残念ながら金メダルが少ないですが、是非とも良い成績で日本を盛り上げて欲しいです。

(光)

A picture is worth a thousand words(=百聞は一見に如かず?)

この英語のことわざの意味は、「だらだら説明するより実際に見せたほうが良い」ということです。一方、日本語訳の「百聞は一見に如かず」は「同じことを百回繰り返すより一見した方が確実」という若干違うニュアンスで解釈されます。

これを更に突き詰めて考えると、「情報理論」の様々な概念が絡んでいることがわかり、とても面白いです。

まず、日英のニュアンスの違いに注目します。英語版では「情報量」という概念が根底にあります。つまり、「一つの画像か、1000単語の文章か、情報量が多いのはどちらか」という問題に帰着します。単純でドライな考え方として画像1枚と1000単語のテキストに含まれるビット数という尺度も考えられますが、その場合は画像やテキストに含まれる「意味」は考慮されていません。より現実的な比較をするとしたら、例えば気象情報を伝えるための手段として、1枚の天気図と1000単語のテキストを比較することなどがあげられます。

一方、日本語訳のニュアンスについて考えてみます。「百聞」の伝統的な解釈は「同じことを100回繰り返す」ということですが、情報理論の観点では同一メッセージを100回送信することに相当します。一方、メッセージが同じであれば情報量そのものは何回送信しても変わりません。このことわざの場合、元々のメッセージに問題があるということになります。

ここで、ことわざの本来の意味から少し逸れますが、同じメッセージを100回繰り返すことにどんな意味があるか考えてみます。もう一度情報理論に戻りますが、「情報量」ではなく、「信頼度」という概念が登場します。デジタル情報伝達システムには「ビット誤り」が一定の確率で起こりますが、それを考慮してどのビットレート(単位時間当たりのビット数)の通信が可能か定式化することができます。また、ビットレートを犠牲にして信頼度を高めるための手法として、メッセージに冗長性を付与する方法(誤り訂正符号など)があります。上記のことわざを情報理論に無理やり当てはめると、「チャンネルの信頼度を上げても、もともとのメッセージの情報量が少なかったため、画像に含まれる情報量より少ない」といったマニアックな解釈が可能です。

また、二つのことわざに共通しているのは「可視化」という概念です。「一見」するというのは一瞬にして情報を知覚することですが、複雑な概念も視覚的にわかりやすく表現することはしばしば求められます。また、音声の中に含まれている情報を視覚化することも次第に重要になってきています。古いことわざがいよいよ実際に試される時代が到来したようです。

(桜)

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