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音の名前と演奏

私は趣味で楽器の演奏をしているのですが、演奏でよくやってしまう失敗が、「♯(シャープ)や♭(フラット)を落とす、あるいは不要なのにつける」というものです。ド♯を鳴らすべきときにドを鳴らしてしまったり、シを鳴らすべきときにシ♭を鳴らしてしまったりすることが、よくあります。ソを鳴らすべきときにラを鳴らしてしまうことなどもありますが、比較するとずっと少ないです。

その理由は、「♯や♭は、頭の中で歌っていないから」だろうと考えています。私は、演奏中は頭の中でドレミで歌っています。このとき、例えば、演奏する音が「ド♯、レ♯、ミ」だったとしても、頭の中で歌うのは「ド、レ、ミ」です。♯があるかなどは、別のところで意識しているのですが、それが、頭の中での歌と比べると、不確かなものなのだろうと想像しています。

そして、♯や♭を頭の中で歌わない、歌えない理由は、歌う音に収まらないからです。ひとつの音に収めやすいのは、「ド」や「ファ」のような一音節でしょう。「ミフラット」のような長い言葉を、ひとつの音にはめるのは困難です。

では、一音節で♯や♭も表せればよいのではないか。そう考えたときに、ドイツ音名に思い至りました。ドイツ音名は、「ド」~「ソ」を「C」~「G」、「ラ」を「A」、「シ」を「H」、「シ♭」を「B」とし、♯がつく音は対象の音に「is」を、「シ♭」以外の♭がつく音は対象の音に「es」をつけるというものです。例えば、「ド♯」は「Cis」です。「ミ♭」と「ラ♭」は例外で、「Ees」と「Aes」ではなく「Es」と「As」です。したがって、「Ais」と「Eis」以外はすべて一音節です。「Ais」と「Eis」も、二つ目の母音に子音がついていないので、なめらかにひとつの音にはめられそうです。しかも、ドイツ音名は、オーケストラや吹奏楽の団体では、一般的に使われています。

そこで、試しにドイツ音名で頭の中で歌ってみようとしたのですが、残念ながら簡単ではありませんでした。一音節といっても、「F」の読み「エフ」の「フ」や、#や♭がつく音の後ろの「s」が、少なくとも日本人の私には重く、一つの音に音名をはめるのがきついようでした。そして、ドレミほど身体にしみついていないことで、歌うことが難しいと感じました。

なお、すべての音の名前を日本語の一音節に収めることも、可能なはずです。「五十音」という言葉がありますが、日本語の一音節の種類は、50より多くあります。音階の音の種類は7つで、それに#、♭、♮(ナチュラル)、ダブルシャープ、ダブルフラットを加えたとしても42種類です。

そして、実際に、日本語の一音ですべての音の名前を表す方法が、過去にいくつか提唱されているようですが、いずれも普及にはいたらなかったようです。正確な理由として断定することはできませんが、やはり、人々の身体にしみついたドレミがすでにある状況に、たとえ合理的であっても、他のものを浸透させるのは容易ではないということかと感じています。

(祐 )

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