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2023年4月

喉元過ぎれば熱さを忘れる

前回のブログでラジオについて読み、思い出したことがありました。

 2011年3月11日の東日本大震災の際、私は東京ビッグサイトに出かけており、電車が止まって帰れなくなったため、大勢の偶然居合わせた人々とともに有明のホテル大広間で朝を迎えました。そのホテルにたどり着くまでは、東京中心部や神奈川方面へのバス停に並んで来ないバスを待ってみたり、駅の構内に新聞紙を敷いて座ってみたりしていました。
当時はみんなガラケーを使っており、携帯でテレビを見たりラジオを聴いたりして情報収集できる人は少数派だったと思います。通話もなかなか繋がらず、公衆電話には長い列が出来ていました。

 地震からだいぶ時間が経って暗くなり、一向にバスが来ない状況で、首から小型ラジオを下げた60代くらいの男性が言いました。「ラジオによると川崎から向こうは電車が動いているらしい。俺は川崎方面に歩いて行くけど、誰か一緒に行く人はいますか?」。確か20時頃だったと思います。私は一緒には行きませんでしたが、災害の時にはやっぱりラジオだなと感じ、その後ラジオを聴くことのできる小さなiPod shuffleを購入しました。震災で家に帰れない体験をした人は「ラジオを携帯しよう」「会社に歩きやすい靴を置いておこう」「非常食を持ち歩こう」「携帯の充電器を持ち歩こう」など、その人なりの災害の備えをしようと決意したと思います。

 あれから10年以上経ち、今もそれを続けている人はどれだけいるのでしょうか。私も歩きやすい靴を履くことだけはしていますが、スマホでラジオが聴けるからいいやとiPod shuffleが壊れた後ラジオは買っていません(でも、スマホの充電器は持ち歩いていないという…)。スマホ一つでできることは増えましたが、逆を返せばスマホが駄目になったら何もできないということ。地震・水害・感染症・他国からのミサイル攻撃など、あの時より被災の可能性が高まっているからこそ、備えをしっかりしなければと思いました。

私もラジオ買おうかな。。。


防災ニッポン 2022年6月22日の記事
話題の持ち歩き用「防災ボトル」を作った!水に強くてこれだけ入る
https://www.bosai.yomiuri.co.jp/article/6494

(幸)

短波ラジオ

ニュースや音楽など、好きなコンテンツを好きなときに聞ける時代がやってきました。テレビやラジオなんて古いメディアの存在感は薄くなっていく一方です。ところが、どういうわけか、音楽レコードが最近人気商品になり、アメリカでは35年ぶりにCDの売上を上回ったことが話題になりました。

趣味の世界ではかつての不便さや欠点が魅力として映ることがあるようです。機械式時計、フィルム式カメラやカセットテープなどが復活してきたことがその象徴です。そして私の場合は「短波ラジオ」でした。

多少の躊躇の末、安い短波ラジオを手に入れました。短波ラジオは私の思い出の中では知らない国の放送を手軽に聞かせてくれる「魔法の箱」でした。雑音だらけのときも、それはそれで雰囲気や味わいの一部でした。

魔法の箱を現代の目で眺めてみるとまず驚くのは値札です。普通の定食の2回分くらいで買えてしまいます。「食」は無駄な趣味と比較してはならぬと言われればそれまでですが、集積回路、液晶ディスプレイやデジタルチューニングといった技術の結集が生姜焼き同然となると、エンジニアとして複雑な気持ちになります。

魔法の箱から流れてきたのはやはりあの懐かしい雑音だらけの音でした。時間とともに変動したり、ときには聞き取れないほど雑音に埋もれたりして、とても心地よい音とは言えないですが、しばらくは音楽のように聞き入っていました。

しかし、しばらく経つと、かつてのわくわく感が消え去り、ネット配信の方がずっと便利だということを当たり前のように実感しました。

魔法の箱はいま、防災グッズとして家のすみっこに眠っています。

 

(桜)

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